「まぁまぁ、気を取り直して!
それで、あかしっくれこーどがどうしたんだっけ?」
「名前長いからアカシャにするな。
あいつは近代を担当してるんだが、アカシャの記録媒体の中でもバグに近い存在でな。
最近繁栄を極めている人類や亜人を記録するだけじゃ満足出来なくなったんだと」
「楽しそうにドンパチしてるのに混ざりたくなったってわけね」
「割とあってる。
感情ってのが生み出すイレギュラーな動きを客観ではなく主観的に体験したかったんだ。
で、その端末として俺が選ばれた」
「でもなんでれん君なのかしら?
悟り開いちゃうようなすごい人とかがアカシャに辿り着いた事もあるんでしょ?
そういうハイスペックな人を使えばいいのに」
「それじゃだめなんだよ。
そういう連中は歴史に名を遺すような大人物だったり、
逆に自己研鑽しかしないひきこもりだったりするのがほとんどなんだ」
「ヒキコモリの人生を追体験してもつまんなそうねぇ。
偉い人はあれかしら、歴史改変とかそういうのが危ないから?」
「その心配よりも、連中はもうブレないからつまらないんだとさ。
一本芯が通ってる姿は感動や教訓を与えるけど、面白くない。
哲学書より漫画のが好きな年頃なんだよ、あいつは」
「なるほどねー……。
れん君は芯がブレまくりで特別やりたい事もないけど
好奇心だけは旺盛でいろんなことに首を突っ込むコメディ体質だから都合が良かったわけね」
「……大体あってる。
付け加えると、寿命の概念が曖昧な妖精の方が長く楽しめるのも理由だな」
「死んじゃったけどね。
復活したれん君はアカシャさんの操り人形なの?」
「いや、俺の言動にあいつの思惑は全く介入しない。
感情の機微が分からないのに口出してもつまらなくなるだけと理解してるみたいだ。
俺が余計な事を考えないように、アカシャに掬われたことを知らないし」
「あれ?
当人のれん君は自分の状況を知らなくて、アカシャさんは不干渉なの?
じゃあ、この設定ってどこで生きてくるの?」
「俺の幻術能力が護身用に与えられたもの、程度かな。
デジカメみたいなもんだな。俺は記録もできるし映すこともできる、と。
無意識だけど記録先がアカシャってことで超高精度なわけだ」
「えー……まぁ、裏設定といえば裏設定らしいけど」
「想像より優秀になってた幻術のためだけに作られた設定だからな。
聞いて面白いものでもなし、これでいいんだよ。
もし俺がまたどこかで使われるとしても、この事は表に出さないつもりだし」
「せっかくあるのにちょっともったいない気もするけど、仕方ないかしらねー。
じゃあ、こんなとこでおしまいにしとく?」
「おう。
もしこの設定をキャラでも知りたきゃ好感度☆10くらいにするんだな」
「☆10とか、三世の先まで愛してますって感じよねー」